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No.7 「真冬の自然の宝さがし」

 こよみの上では、すでに節分立春を過ぎましたが、まだまだ冬の寒さは厳しいです。今冬は1月後半に最高気温が10℃以下の日が多く続き、池の水がこおったり、霜柱がみられたりしました。
 虫たちはこの寒さの厳しい冬をどのように過ごしているのでしょうか。ちょっと見ても見つからない虫たちも、様々な場所でいろいろな姿で命をつないでいるのです。
 さあ、みなさんも冬の自然の宝さがしをやってみましょう。意外な発見があっておもしろいですよ。

撮影・解説:松田邦雄



 

冬にだけ出現する虫・フユシャク
冬にだけ出現する虫・
フユシャク
ウラギンシジミ・クモヘリカメムシ
ウラギンシジミ
クモヘリカメムシ
ハートマークのカメムシ発見
ハートマークの
カメムシ発見
エノキの根元のかれ葉についてねむる幼虫
エノキの根元のかれ葉に
ついてねむる幼虫
木札の裏にひそむ虫たち・1
木札の裏にひそむ
虫たち・1
木札の裏にひそむ虫たち・2
木札の裏にひそむ
虫たち・2
木札の裏にひそむ虫たち・3
木札の裏にひそむ
虫たち・3
木にまいた薦(コモ)にひそむ虫たち
木にまいた薦(コモ)に
ひそむ虫たち
朽木の中にひそむ虫
朽木の中に
ひそむ虫
葉裏について越冬する蝶の幼虫
葉裏について越冬する
蝶の幼虫
木の枝についている虫・1
木の枝についている
虫・1
木の枝についている虫・2
木の枝についている
虫・2

 





冬にだけ出現する虫・フユシャク
フユシャク

撮影日:2008年1月17日  撮影場所:東京都八王子市高尾町
 1月17日、東京では初雪、うっすらと雪化粧がみられました。
 この寒さの中で冬にだけ出現するという変わり者の蛾がいるのです。
 皆さんよくご存知のシャクトリムシは、このシャクガという仲間の蛾の幼虫です。12〜2月頃に発生するのです。ふつうの虫は15℃以下では活動できないものが多いのですが、このフユシャクは5℃以下の気温の中でも夕方になると灯りを求めて飛ぶのです。
 めすははねが退化していてありません。そのかわり足が発達していて長く大きいです。フェロモンを出しておすを呼び、交尾をするのです。夏の間は土の中で蛹で眠っています。

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木の葉裏などにかくれて成虫で越冬している虫たち
ウラギンシジミ・クモヘリカメムシ

撮影日:2008年1月17日  撮影場所:東京都八王子市高尾町
 寒い冬を迎えると、卵を産んで死んでしまう虫もいますが、中には死なずに成虫の姿のままじっとどこかにかくれている虫もいます。
 ウラギンシジミというこの蝶は、その名のようにはねの裏が銀白色で、ツバキ、カシなど常緑樹の葉裏にとまり何と5ヶ月間近くも何もえさをとらずに冬を過ごすのです。みなさんの家のまわりや公園などのツバキやカシなどの常緑の木の下に立ち、下から葉裏を見上げると、銀白色のこのウラギンシジミを発見できるかもしれません。
 緑色の細長いカメムシも発見できました。このカメムシも成虫で冬を越していました。

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木の根元のかれ葉で、ハートマークのカメムシ発見
エサキモンキツノカメムシ

撮影日:2008年1月17日  撮影場所:東京都八王子市高尾町
 木の根元のかれ葉をめくってみると、何とハートマークのついた美しいカメムシを発見しました。名まえはエサキモンキツノカメムシといいます。ハートマークなので、ラブラブカメムシなんてニックネームもつけたいですね。その近くに美しく紫色のはねのチョウがいました。でもよく見ると、死んでいるようです。ムラサキシジミでやはり成虫で越冬していたのですが、死んでしまったようです。
 このように越冬中に死ぬ虫も多いのです。

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エノキの根元のかれ葉についてねむる幼虫
ゴマダラチョウとオオムラサキの幼虫

撮影日:2008年1月17日・24日  撮影場所:東京都八王子市高尾町
 エノキの大木の根元のかれ葉をめくってみると、かれ葉にぴったりとくっついた幼虫が見つかりました。
 これはゴマダラチョウやオオムラサキという蝶の越冬幼虫です。ゴマダラチョウとオオムラサキの幼虫はよく似ていますが、くらべて見ると違いがわかります。エノキの若芽の出る4月頃には、幼虫も木に登り、エノキの若葉を食べて育ち、ゴマダラチョウは5月頃、オオムラサキは6〜7月頃に蝶になります。

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木札の裏にひそむ虫たち・1
ヨコヅナサシガメ

撮影日:2008年1月24日  撮影場所:東京都千代田区北の丸公園
 公園の木には木の名まえを記した木札がついているのがよく見られます。この木札を裏がえすと、実にいろいろな虫を発見できることもあります。
 ケヤキの木札では、ヨコヅナサシガメの幼虫が何十匹も集団でかくれていました。日を当てると少しずつ動きました。黒に赤い紋の目立つ少し気味の悪い虫です。
 カメムシのサシガメという仲間で、ほかの虫をおそって口をさしこみ汁を吸うのです。6月頃には大きな貫禄のあるその名のようなヨコヅナカメムシの成虫がみられます。

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木札の裏にひそむ虫たち・2
クヌギカメムシの卵塊

撮影日:2008年1月31日・2月5日  撮影場所:東京都千代田区北の丸公園
 コナラの木札を裏がえしてみると、何と…つぶつぶの細いかたまりがいくつもついていました。虫めがねでよく見ると、虫の卵のようです。図かんで調べてこれはクヌギカメムシの卵塊であることがわかりました。
 同じカメムシの仲間でもこのように種類によっては卵塊で越冬するものもあるのです。
 このような発見したものを資料を使って調べるのもまた楽しいものです。

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木札の裏にひそむ虫たち・3
シラカシ・クサギカメムシ・コシダカグモ

撮影日:2008年1月30日・2月5日  撮影場所:東京都千代田区北の丸公園
 シラカシの木についた木札を裏がえしてみると、クサギカメムシが何匹もかくれていました。じっとしていてほとんど動きません。
 しかもそこはクモの巣もあって、何と大きなクモもいっしょにじっとかくれていました。
 足が長いクモで、コシダカグモというクモです。足をひろげると10cmにもなる大型のクモです。

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木にまいた薦(コモ)にひそむ虫たち
ヨツモンカメムシ

撮影日:2008年1月17日  撮影場所:東京都八王子市高尾町
 木にまいた薦(こも)を見かけることがあります。
 これは、木につく害虫を冬にこの薦の中へさそいこみ、これを春になる前にとりはらって焼き、害虫退治をするようです。
 薦の中で、どんな虫たちが越冬するのか調べるには絶好の場所です。
 ふだんあまりみられないヨツモンカメムシを発見しました。

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朽木の中にひそむ虫
コクワガタの幼虫

撮影日:2008年1月24日  撮影場所:東京都千代田区北の丸公園
 朽木の中にもいろいろな虫がかくれて冬越ししています。少ししめった朽木をほぐしていくと、コクワガタの幼虫を発見することができました。
 都市の真中の公園にもコクワガタが生息していることがわかりました。

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葉裏について越冬する蝶の幼虫
アサギマダラの幼虫

撮影日:2008年1月17日  撮影場所:東京都八王子市高尾町
 真冬の虫たちは、餌もとらず、ただじっとしている虫ばかりと思いがちですが、これはキジョランという葉についている蝶の幼虫です。葉に小さな穴がみられました。
 裏をめくってみると、葉裏に10mmくらいの幼虫が葉肉を丸くかじっていました。冬の間も少しずつ葉をかじっているのです。これはアサギマダラという山地性の蝶の幼虫です。5月頃に成虫になり山野を優雅に舞う蝶です。
 この蝶は時に季節風に乗ってはるばる数千kmも旅をすることで有名です。

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木の枝についている虫・1
オオカマキリ・ハラビロカマキリ・コカマキリの卵

撮影日:2008年1月17日・30日・31日  撮影場所:東京都千代田区北の丸公園
 夏から秋の頃によく見られたカマキリたちは卵を木に産みつけて死んでしまいます。冬の木や草でカマキリの卵のうはよくみつかります。カマキリの種類によって卵のうの形も大きさもちがいます。

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木の枝についている虫・2
クダマキモドキ・クスサン・イラガ

撮影日:2008年1月17日・24日  撮影場所:東京都千代田区北の丸公園
 ヒュウガミズキの木の小枝の皮をけずり立てたようなものを発見。これを調べてみると、クダマキモドキというキリギリスなどの仲間の虫の産卵のときについた傷あとであることがわかりました。
 網目のあるまゆはクスサンという蛾のまゆですが、まゆの中にあったのは蛹のぬけがらでした。この蛾は夏の頃に羽化するので、蛹で冬を越すのではなく卵越冬です。
 丸い穴のあいたまゆはイラガのまゆでやはり夏の間に羽化したあとです。

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