科学技術館メールマガジン バックナンバー


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  ━  ◆ 科 学 技 術 館 メールマガジン ◇ 第302号 ◆  ━
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                             >>>2010/10/13発行
  
   こんにちは。科学技術館です。
  
   当メールマガジンは毎週水曜日発行です。ご愛読よろしくお願いします。
   太陽のまわりを6年半で回っている「ハートレイ彗星」が今年は地球に最
   接近します。今週あたりから、暗い場所では肉眼で見えるかもしれません。
  
   * このメールマガジンは等幅フォントでご覧ください。
  
   本号の配信数 9,249人。
  
  
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   【1】科学技術館最新情報
       新着情報・・・「日本IBM TryScience実験教室」
              特別教室「サイクルサイエンス教室」
              「ウインター・サイエンスキャンプ'10−'11」
              「今週のユニバース」
  
   【2】科学技術館ラボラトリー
       科学・技術よもやま話・・・
                  「走って再実感、衣食住のありがたさ」
       自然と友だち・・・「秋の訪れ 野の草花 虫たち」
  
   【3】科学技術館おすすめ
       科学の本の紹介・・・今月のテーマ「スポーツや外遊び」
  
   【4】科学技術館ニュース
       お知らせ・・・栄光ゼミナールの出張理科実験教室
               「みるものなんでも万華鏡づくり
                         〜かがみと光の科学〜」
              「宙博(ソラハク)2010」
       他館の紹介・・・所沢航空発祥記念館、船の科学館
  
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  【1】    ★ 科 学 技 術 館 最 新 情 報 ★
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  ◆ 新着情報
  
   ■ 日本IBM TryScience実験教室 10月 ■
  
    「TryScience(トライサイエンス)実験教室」は、毎月1回、日曜日に
   開催しています。
  
    開催日時:10月24日(日)13時〜16時
    開催場所:4階D室 イベントホール
  
    詳しくは、こちらをご覧ください。
    http://www.jsf.or.jp/info/2010/10/post_312.php
  
   ■ 特別教室「サイクルサイエンス教室」 ■
  
    自転車のバランスやハンドルの秘密、車輪の秘密実験など自転車の秘密
   について、実際の自転車を使って徹底分析してみませんか?
    また、パソコン上で自転車の部品を組み合わせて組み立てた自転車画像
   をTシャツにプリントしてお持ち帰りいただきます。
  
    日 時:10月24日(日)10時〜、13時30分〜(各回約2時間)
    場 所:4階 パソコン道場
    参加費:無料(入館料は必要です)
    対象者:小学生3年生以上、保護者も参加可
    定 員:各回30名(定員になりしだい締切)
        ※開館時から会場にて受け付けます。
  
    詳細はこちらをご覧ください。
    http://www.jsf.or.jp/info/2010/10/post_314.php
  
    ※この教室は、競輪の補助金を受けて開催します。
    競輪オフィシャルサイト
    http://keirin.jp/
    RING!RING!プロジェクト 競輪補助事業ホームページ
    http://ringring-keirin.jp/
  
   ■ 高校生のための先進的科学技術体験合宿プログラム
     「ウインター・サイエンスキャンプ'10−'11」参加者募集中 ■
  
    ウインター・サイエンスキャンプ'10−'11は先進的な研究テーマに
   取り組んでいる日本各地の大学・公的機関(10会場)で、冬休み期間中
   に本格的な実験・実習が受けられる、高校生のための科学技術体験合宿プ
   ログラムです。
    実際の研究開発現場に触れ、将来の参考となるよい機会です。高校生の
   みなさん、興味のあるプログラムにぜひご応募ください。
  
    開催期間:12月23日〜2011年1月7日の期間中の2泊3日
    会  場:大学、公的機関(10会場)
    定  員:受け入れ会場ごとに10〜20名(合計158名)
         ※前年度平均応募倍率3.1倍
    参 加 費:無料(自宅と会場間の往復交通費は自己負担。宿舎・食事は
         用意します)
    応募締切:11月9日(火)郵送必着
  
    プログラムや応募方法など、詳しくは、こちらをご覧ください。
    サイエンスキャンプ事務局ホームページ http://ppd.jsf.or.jp/camp/
  
   ■ 今週のユニバース ■
  
    今週土曜日午後の科学ライブショー「ユニバース」は、特別構成とし、
   今回のノーベル賞受賞研究についての緊急解説を行います。
    物理学賞、鈴木先生・根岸先生が受賞された化学賞、生理学・医学賞の
   それぞれについて、関連する研究をされている方々をゲストとしてお招き
   し、グラフェン、クロスカップリング、体外受精の研究について解説いた
   だく予定です。
  
    案内役:大朝由美子さん(埼玉大学)
    ゲスト:河野行雄さん(理化学研究所)…物理学賞
        山田陽一さん(理化学研究所)…化学賞
  
    生理学・医学賞の解説者や全体の構成につきましては、現在調整中です。
   決まり次第科学技術館ウェブサイトに掲載しますので、今しばらくお待ち
   ください。
  
    科学ライブショーの詳細や今後の出演予定者については、
    http://universe.chimons.org/jsf/ をご覧ください。
  
  
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  【2】   ★ 科 学 技 術 館 ラ ボ ラ ト リ ー ★
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  ◆ 科学・技術よもやま話
  
   ■ 走って再実感、衣食住のありがたさ ■
  
    今年の夏は本当に暑かったですが、やっと運動をするにはいい季節にな
   ってきました。「東京マラソン」の影響からか、ここ数年のマラソンブー
   ムで皇居の周りを走る人が増えてきました。
    ところでみなさんはテレビのマラソン中継を観ますか?テレビに映るよ
   うなエリートランナーは真冬でもランシャツ・ランパンで走っていますよ
   ね。あの格好じたい私には真似ができないことです。真冬にあの格好でい
   られるということは、それだけ最後までエネルギーを燃焼し続け、体温を
   維持していられるからこそです。ですが私のような市民ランナーだとそう
   はいきません。よく「マラソンは30kmから」といわれます。私も大会
   では30kmからいかに粘れるかが勝負になってきます。たいてい30k
   mを過ぎたあたりから疲労により運動機能と代謝が落ち、かいていた汗が
   逆に冷たく感じられます。そうするとちょっとした風でも敏感になり、最
   後は寒さとの戦いにもなってきます。このようなことから私の場合レース
   前のウエア選択は非常に重要なことになります。
    マラソンの大会にはフルマラソンよりも長い距離を走るウルトラマラソ
   ンという大会もあり、全国各地で行われています。走る距離が長いという
   ことはそれだけ走る時間も長くなり文字通り「朝から晩まで」走ることに
   なります。したがってレース中は雨が降ろうが風が吹こうが当然外気にさ
   らされることになります。そこでランナーを助けてくれるのがコースの途
   中にあるエイドステーションです。ウルトラマラソンのエイドステーショ
   ンでは着替えができたり、飲みものはもちろんですが、うどんやそば、お
   にぎり、豚汁などの食べものも用意されています。ですが長い距離を走り
   続けると内臓も疲労からか、せっかくの食べものをうけつけなくなる場合
   があります。こうなると本当の地獄です。足の痛みの他に吐き気もしてき
   て気力がなくなってきます。このようなことから「ウルトラは内臓で走る」
   とたとえる人もいます。こんな極限状態を経験すると、食べることができ
   るのは幸せなことだと痛感します。
    ゴールをした後はなんといってもまずお風呂。疲れきった体にお風呂は
   格別で湯船に入ったときは思わず「ウーッ」とうなってしまいます。そし
   て屋根のある温かい部屋で寝ることができるということを本当にありがた
   く感じます。
    マラソンは自分でも「何でこんなことをしているんだろう?」と思うよ
   うな、肉体的にも精神的にもきついものですが、マラソンという極限的な
   活動から普段の生活の快適さをよりいっそう感じることができます。
  
    執筆者:森山 健一郎 総務部
  
    「科学・技術よもやま話」のバックナンバー
    http://www2.jsf.or.jp/mailmaga/y_index.html
  
  ◆ 自然と友だち
  
   ■ 秋の訪れ 野の草花 虫たち ■
  
    例年より、一週間ほどおくれた秋の訪れ、草花の咲き方にそのちがいを
   はっきり感じることができます。
    ようやく、キンモクセイのよい香りもあたりに漂ってまいりました。ア
   オマツムシは木の上で元気よく鳴き、草むらのエレスコオロギの声やカン
   タンの声など秋の風情を感じさせます。どうしたことかアキアカネの姿は
   まだ見られません。見られるアカトンボはナツアカネばかりでした。
  
    「秋の訪れ 野の草花 虫たち」の写真
    http://www2.jsf.or.jp/mailmaga/photo/ss73/
  
    執筆者:松田邦雄 サイエンス友の会 講師
  
    「自然と友だち」のバックナンバー
    http://www2.jsf.or.jp/mailmaga/photo/t_index.html
  
    ハンドブック「散歩のおとも〜北の丸公園の自然〜」好評発売中!
    郵送をご希望の方は、こちらから
    http://www2.jsf.or.jp/mailmaga/otomo/otomo.htm
  
  
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  【3】    ★ 科 学 技 術 館 お す す め ★
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  ◆ 科学の本の紹介
  
    10月はスポーツの秋!今月はスポーツや外遊びにちなんだ本を紹介し
   ます。
  
   ■ 『自転車の発明―いたずらはかせのかがくの本11』 ■
      板倉聖宣 文 松本キミ子 絵 国土社 1981年9月
  
    スポーツの中で最も過酷なものの一つに鉄人競技トライアスロンがあり
   ますね。水泳1.5km自転車40kmマラソン10kmの計51.5k
   mをかけぬけます。この夏も各地で大会が開催されました。
    さて、その自転車、世界で一番はじめの自転車はいつごろ作られたか知
   っていますか?世界で最初にハンドルがついた実用自転車は1817年に
   ドイツのドレイスという人が発明したそうです。この自転車はタイヤは木
   の車に鉄の輪がはめられているものでとても重く、またペダルはなく足で
   地面を力強くけって進むものでした。でもまだ徒歩か馬しか移動手段がな
   かった時代なので、この足でけって走らせる自転車は大人気だったそうで
   す。「車は2つでも走っていれば倒れない」ということがわかったのです
   ね。そうしていろんな人が改良に取り組み1839年には初めてペダルが
   つきました。どんどん軽く、速く、安全に、と次々に変わる自転車の様子
   が楽しい絵でわかりやすいです。
    この本は、普段何気なく乗っている身近な自転車がさまざまな工夫が積
   み重ねられてできたものだったことがよくわかります。自分自身で工夫す
   る、改良する楽しさを教えてくれそうな1冊です。この本は現在売ってい
   ません。図書館などでぜひ手に取ってみてください。
  
    執筆者:渡部美帆 科学読物研究会
  
    この本の表紙はこちらのURLをご参照ください。
    http://kagakuyomimono.cool.ne.jp/hon/11gijutsu/jitenshanohatumei/jitenshanohatumei.html
  
    科学読物研究会ホームページ http://kagakuyomimono.cool.ne.jp/
  
    「科学の本の紹介」のバックナンバー
    http://www2.jsf.or.jp/mailmaga/b_index.html
  
  
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  【4】    ★ 科 学 技 術 館 ニ ュ ー ス ★
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  ◆ お知らせ
  
   ■ 栄光ゼミナールの出張理科実験教室
        「みるものなんでも万華鏡づくり〜かがみと光の科学〜」 ■
  
    万華鏡づくりをしながら、わたしたちの生活に欠かすことのできない鏡
   は、どんなつくりになっているのかや、万華鏡をみるのに欠かせない光の
   性質などについて学習できる実験教室です。
  
    開 催 日:10月17日(日)
    開催時間:13時〜、14時15分〜、15時30分〜(各回45分)
    開催場所:2階C室イベントホール
    対  象:小学生
    定  員:各回20名
    受  付:各回の15分前から会場にて
  
    詳細は、こちらをご覧ください。
    http://www.jsf.or.jp/info/2010/10/post_304.php
  
   ■ 「宙博(ソラハク)2010〜人類は宙にふれて進化する〜」
                   宙から始まる環境エネルギー革命 ■
  
    宙博(ソラハク)は、一見関係がなさそうな「宇宙・天文」と「環境エ
   ネルギー」をつなぐという新しい観点から、子どもたちの夢と希望と好奇
   心を育て、また、新しい時代の案内役となるイベントです。
    はやぶさやイカロスといった衛星関連の展示や、電気自動車、太陽光発
   電といった地球環境を考える展示、各分野で活躍中の科学者や文化人のレ
   クチャー、親子で楽しめる体験型ワークショップなど、宇宙・天文・環境
   の最新技術や研究成果をわかりやすく紹介します。
    宙博で、宇宙の神秘と人類の希望にふれて、地球環境について考えてみ
   ましょう。
  
    開催期間:10月29日(金)〜31日(日)
    開催場所:1階催事場
    入 場 料:一般(中学生以上)1,500円(前売り1,000円)
         小人(4歳以上)   800円(前売り  500円)
         ※科学技術館の常設展示もご覧いただけます。
    主  催:宙博実行委員会
    運  営:株式会社ナノオプト・メディア
    特別協力:朝日新聞社
    問合せ先:宙博お問い合わせ事務局
         電話:03−5724−7933(平日10時〜17時)
         Eメール:sorahaku10-info@f2ff.jp
  
    チケット情報やイベントの詳細はこちらをご覧ください。
    http://www.sorahaku.jp/
  
  ◆ 他館の紹介
  
   ■ 所沢航空発祥記念館 ■
  
   ☆秋の特別展「日本人パイロット1世紀のあゆみ
             〜憧れの空から、みんなの空へ〜」開催のお知らせ
  
    2010年は日本における初飛行から100年目に当たり、また日本人
   パイロットが誕生して100年目にも当たります。所沢航空発祥記念館で
   は「パイロットの教育の歴史」及び「コックピットの変遷」というテーマ
   で貴重な資料を通して、空を飛ぶという夢を実現するまでの過程と航空の
   安全性及び快適性などにパイロットが果たしている役割を紹介します。
  
    開催期間:10月23日(土)〜11月30日(火)
    開館時間:9時30分〜17時(入館は16時30分まで)
    場  所:展示館1階(入館料は必要です)
    協  力:日本航空、航空科学博物館、東京大学鈴木土屋研究室、
         日本郵趣協会航空部会ほか
  
    詳細はこちらをご覧ください。
    http://tam-web.jsf.or.jp/contx/modules/myalbum5/viewcat.php?cid=1&orderby=dateD
  
   ■ 船の科学館 ■
  
   ☆「サンセット・シップウォッチング」開催のお知らせ
  
    この夏、ご好評をいただきました「シップ・ウォッチングin東京港」
   を、夕方からご乗船いただく「サンセット・シップウォッチング」として、
   下記のとおり開催いたします。
    当イベントは、たくさんの人や船が行き交う東京港の、昼とはまた違っ
   た夕方の姿を、チャーターした観光船に乗って海から探検してみようとい
   うものです。みなさまのご応募をお待ちしております。
  
    開催日時:11月6日(土)15時45分〜17時15分
    開催場所:青海(あおみ)海上バス乗り場(船の科学館前)、東京港内
    募集定員:150名(使用船舶:水辺ライン「こすもす」)
    参 加 費:大人1,000円、18歳以下500円
         (船の科学館入館料、乗船料、テキスト代、保険料相当含む)
    参加方法:ハガキによる申込
    申込締切:10月23日(土)必着
  
    詳細は、以下のホームページをご覧ください。
    http://www.funenokagakukan.or.jp/news/?p=349
  
  
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             ★ 担 当 者 よ り ★
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   ■ ハーバード白熱教室を視て ■
  
    長く居座っていた酷暑がようやく立ち退いてくれて、入れ替わりに「読
   書の秋」がやってきました。
    先日、大学生協書籍部におけるベストセラーのリストを見たところ、昨
   年は、外山滋比古著「思考のレッスン」のリバイバル独走でしたが、今年
   は、マイケル・サンデル著『これからの「正義」の話をしよう』と、グレ
   イグ・ヘラー他著『カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書(全3
   冊「細胞生物学」、「分子遺伝学」、「分子生物学」)』が目につきます。
   残念ながら、いずれも米国で出版されたものの翻訳です。片やギリシャ時
   代から2千数百年のひとびとの思索を受け継いでいる哲学であり、一方は、
   20世紀の後半になって格段の進歩を遂げたバイオの本ということで、き
   わめて対照的です。この本の読者は、どのくらい重なっているのか興味の
   あるところです。というのは、バイオの世界では、生命の根幹へのアクセ
   ス、コントロールが可能になっており、その操作については、これまでの
   価値観、倫理観では十分に対処できなくなっているからです。
    そのことはさておき、ハーバード大学サンデル教授の「正義(Just
   ice)」は、60万部を超える売れ行きとか(注1)。哲学という地味
   なジャンルで、この4月に出版されてから半年も経たないのに、この部数
   に到達するとは、驚くべき現象といえるでしょう。哲学や思想に関する本
   の読者層は、マーケット的にはかなり明確になっており、「売れて2万部
   程度」が相場だったからです。
    爆発的に売れているのは、NHK教育テレビなどで再三放映された「ハ
   ーバード白熱教室」と題する講義ビデオの影響によることが大きいと思い
   ます(注2)。テレビを視たひとは文字で再確認のため、み損なったひと
   もテレビの再現を本に期待して購入するのでしょう。なかには経済学でい
   うシグナリング効果やデモンストレーション効果に因るものもあるかもし
   れませんが、日本人がこの種の本を渇望していたことも事実として認めな
   ければならないでしょう。
    さて、このテレビで放映された講義の魅力は、どこにあるのでしょうか?
   1.教室には大道具も小道具もない。先生と1,000人の学生たちが向
     かい合っての「双方向の切り結び(two−way communi
     cation)」だけで、講義が成り立っている。
   2.講義の場では、テキストをまったく使用しない、パワーポイントなど
     のディスプレイもほとんど使わない、そもそも黒板がステージにはな
     い。だから、先生の目と学生の目が離れることがない。
   3.先生は、抽象的な導入部なしに、いきなり具体的な事例を取り上げて、
     学生とのディスカッションをしながら、講義のテーマに沿って議論を
     進めていく。
   4.先生は、学生の意見がピンボケでもエキセントリックでも、常にポジ
     ティブに引き取って、さらなる意見を求めてくる。もちろん、問いか
     けの性質上、唯一の正解があるわけではない。
   5.学生はあまりノートを取ることはなく、先生の問いかけに応じて、
     「自分がその立場にいたらどうする?」の意見を考えることに集中し
     ている。
   6.講義の場で先生から受け渡される「情報量」は、伝統的な講義に比べ
     ると非常に少ないと思われる。
    このようにポイントを書き出してみると、いま、日本で、普通に行われ
   ている「講義のかたち」とは、ずいぶんと違うことに驚かされます。先生
   がしゃべりながら、背中を見せて黒板に書くことを学生がノートに書き写
   していく、あるいは大量の情報を入れたパワーポイントの投射スクリーン
   を中心に話す、というやり方に対して、この哲学の講義では、ディベート
   の形式で教員と学生との活発な対話で進められる授業形式(ソクラテス方
   式)の優れた点が特に目立って見えます。
    この講義は大学でのものですが、理解するのに哲学を専攻している必要
   はまったくありませんし、高校生以下の若いひとたちでも十分に理解でき
   るものです。
    日本では大学の教養課程が一部を除きほぼ廃止され、学生が哲学の科目
   を取る機会が少なくなっています。そんなわけで手元に大学生のデータが
   ないので、高校生の資料を見てみましょう。「哲学」は、高校では「公民」
   に含まれています。1999年改訂の現行学習指導要領では、その目標を
   「広い視野に立って、現代の社会について主体的に考察させ、理解を深め
   させるとともに、人間としての在り方生き方についての自覚を育て、民主
   的、平和的な国家・社会の有為な形成者として必要な公民としての資質を
   養う。」においています。この目標の前段部分は、まさにサンデル先生の
   講義で行われていることといえるでしょう。では、日本ではどのような
   「公民」の授業になっているのか。ベネッセの2006年調査によると、
   「公民」は高校生が「好きな教科」のなかで最低であり、わずか四分の一
   が好きであるとしています。では、授業の理解度はどうか。「公民」は2
   5%で、これまた最低のポイントです。
    この調査では、好きな学校の勉強方法についても調べています。「先生
   が黒板を使いながら教えてくれる授業」が好きとする者、82%。「友だ
   ちと話し合いながら進めていく授業」61%、「グループで何かを考えた
   り調べたりする授業」51%、「個人で何かを考えたり調べたりする授業」
   47%。「考えたり調べたりしたことをいろいろ工夫して発表すること」
   30%(注3)。
    NHKは、放送に際して、番組タイトルを「ハーバード白熱教室」とし
   ました。「白熱教室」は原タイトルにはありません。バブル崩壊以来この
   20年間、日本人は、いい意味での「白熱」あるいは「夢中」といった雰
   囲気を感じる機会を忘れていたようです。
    そういう雰囲気を教室に創り出す。これには、教員の努力のほかに、学
   生の主体的な熱意が必要不可欠です。
  
                        (企画広報室 吉田 浄)
  
   注1.この本の第1章をネット上で読むことができます(無料)。
      http://www.hayakawa-online.co.jp/images/top/justice_chapter1.pdf
      をご覧ください。
   注2.NHKでは、当面、これ以上の再放送の予定はないようです。代わ
      りに、NHKオンデマンド(有料)が視聴可能で、12月にはDV
      Dが発売されるとのことです。また、ハーバード大学のHPからは、
      YouTubeを通じて視聴することができます(英語字幕付き)。
      http://www.justiceharvard.org/index.php?option=com_content&view=article&id=11&Itemid=8
      を検索してください。
   注3.この調査は、ベネッセ教育研究開発センターが行ったもので「第4
      回学習基本調査・国内調査 高校生版」2006年です。
      http://benesse.jp/berd/center/open/report/gakukihon4/hon/index_kou.html
      からダウンロードすることができます。
  
  
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  ┘ 発行者:科学技術館メールマガジン係               ┘
  ┘    〒102-0091 東京都千代田区北の丸公園2番1号       ┘
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  ┘  載の際には、「科学技術館 メールマガジン 第何号の***の  ┘
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