科学技術館メールマガジン バックナンバー


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  ━  ◆ 科 学 技 術 館 メールマガジン ◇ 第321号 ◆  ━
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                              >>>2011/3/2発行
  
   こんにちは。科学技術館です。
  
   当メールマガジンは毎週水曜日発行です。ご愛読よろしくお願いします。
   明日は桃の節句「ひな祭り」です。災厄を人形に移しておはらいした「流
   しびな」の風習からきているようです。
  
   * このメールマガジンは等幅フォントでご覧ください。
  
   本号の配信数 9,461人。
  
  
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   【1】科学技術館最新情報
       新着情報・・・「ワクエコ・カーモデラー教室」参加者募集!
              「日本IBM TryScience実験教室」
              「今週のユニバース」
  
   【2】科学技術館ラボラトリー
       科学・技術よもやま話・・・「水のチカラで、電力を。」
       科学技術“感”をきたえよう!
  
   【3】科学技術館おすすめ
       科学の本の紹介・・・今月のテーマ
                「マリー・キュリーに関する本と化学の本」
  
   【4】科学技術館ニュース
       お知らせ・・・・「青少年のための科学の祭典2011全国大会」
                           出展者募集のご案内
               「休館日設定のお知らせ」
               「ミュージアムショップからのお知らせ」
       他館の紹介・・・所沢航空発祥記念館、船の科学館
       イベント情報・・第14回ロボットグランプリ
               松田邦雄先生「夢追蝶」写真展のお知らせ
  
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  【1】    ★ 科 学 技 術 館 最 新 情 報 ★
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  ◆ 新着情報
  
   ■ 「ワクエコ・カーモデラー教室」参加者募集! ■
  
    市販されている自動車のデザインを造るプロのカーモデラーと一緒に、
   モデル専用の粘土を削りながら自動車のデザインを造っていくクレイモデ
   ル造形に挑戦し、モデル造形を体験学習できる教室です。
    教室への参加希望の方は往復はがきにて、お申し込みください。
  
    開 催 日:3月28日(月)
    開催時間:10時〜12時30分(午前の部)
         13時30分〜16時(午後の部)
    開催場所:2階D室 ワクエコ・モーターランド
    対  象:小・中学生(小学1〜3年生は、保護者の同伴が必要です)
    参 加 費:無料(参加者は入館料も無料、同伴者は有料です)
    募集人数:各回9名(応募多数の場合には抽選となります)
    申込締切:3月17日(木)必着
  
    ※本教室は昨年9月23日(祝)・11月23日(祝)に開催したもの
     と同一の内容です。その2回にご参加の方はご応募いただけません。
  
    申込方法などの詳細は、こちらをご覧ください。
    http://www.jsf.or.jp/info/2011/03/post_366.php
  
   ■ 日本IBM TryScience実験教室 3月 ■
  
    「TryScience(トライサイエンス)実験教室」は、毎月1回、日曜日に
   開催しています。
  
    開催日時:3月13日(日)13時〜16時
    開催場所:4階D室 イベントホール
  
    詳しくは、こちらをご覧ください。
    http://www.jsf.or.jp/info/2011/03/post_361.php
  
   ■ 今週のユニバース ■
  
    土曜午後の科学ライブショー「ユニバース」では、4階シンラドームの
   スクリーンに全天周のシミュレーション映像を投影し、地球から太陽系、
   恒星の世界、銀河の世界、そして宇宙全体のお話をお伝えします。
    「ゲストコーナー」では、その宇宙の中でも、「小惑星の魅力」につい
   てお話いただく予定です。
  
    案内役:大朝 由美子さん(埼玉大学)
    ゲスト:野沢 由依さん(日本女子大学)
  
    科学ライブショーの詳細や今後の出演予定者については、
    http://universe.chimons.org/jsf/ をご覧ください。
  
  
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  【2】   ★ 科 学 技 術 館 ラ ボ ラ ト リ ー ★
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  ◆ 科学・技術よもやま話
  
   ■ 水のチカラで、電力を。 ■
  
    今回のよもやま話は、水の持つエネルギーで電気をつくる「水力発電」
   のお話です。
    水力発電は、高い所にある水が持っている「位置エネルギー」を、「電
   気エネルギー」へと変換する発電方法です。燃料が必要ないことや、発電
   時にCO2(二酸化炭素)などを排出しないこと、運転停止がしやすいな
   どの長所を持っています。日本では1891年に京都の蹴上(けあげ)発
   電所が事業用水力発電を開始し、その歴史をスタートさせたそうです。こ
   の蹴上発電所は、現在も稼働中です。
  
    水力発電所では、ダムなど高い所に貯水された水が落ちる力で水車を回
   します。水車は発電機につながっていて発電機を回転させます。発電機が
   回転すると、そこで電気がつくり出されるわけです。つまり、水力発電で
   は「位置エネルギー(高い位置にある水)」→「運動エネルギー(水車)」
   →「電気エネルギー(発電機)」という、エネルギーの変換を行っている
   のです。
  
    そんな水力発電の中で、「揚水発電(ようすいはつでん)」というもの
   があります。揚水式の水力発電は、発電時に使用した水を下部貯水池に溜
   (た)めておき、再び上部貯水池にくみあげて使用するという方法です。
   昼間などの電力需要の多い時に、上部貯水池にある水を使用して発電を行
   います。そして、夜間に火力発電所や原子力発電所からの余剰電力を利用
   して、下部貯水池から上部貯水池へ水をくみあげておき、再び電力需要の
   多いときに発電を行うのです。下部貯水池から上部貯水池に水をくみあげ
   る際には、電気を使って発電機をモーターに逆用します。火力発電所や原
   子力発電所では運転停止が容易ではありません。絶えず一定の発電量を維
   持すると効率が良いのですが、そうすると夜間には電力が余ってしまいま
   す。揚水式の水力発電所では、その余剰電力を利用して水をくみあげてい
   るのです。
  
    科学技術館3F・DENKI FACTORYのワークショップでは、
   発電をテーマにした実験プログラムのときに、水力発電の仕組みがわかる
   簡単な実験道具が活躍しています。「上部貯水池」・「タービン部」・
   「下部貯水池」の3つのユニット(写真1〜3)で構成されていて、揚水
   発電の説明をすることもできます。この原理モデルは私が製作した、手づ
   くりの実験道具です。本体はペットボトルなどの身近にあるものを使用し
   ているので、頑張れば子どものみなさんにもつくることができます。既に
   1人の男の子から、この原理モデルを完成させたとの報告を受けています。
   興味を持った方は、ぜひ「My 水力発電モデル」(写真4)の製作にチ
   ャレンジしてみてください。
  
    写真1〜4についてはこちらをご覧ください。
    http://www2.jsf.or.jp/mailmaga/321/321.pdf
  
    電気事業連合会【でんきの情報広場】「揚水式水力発電」
    http://www.fepc.or.jp/learn/hatsuden/water/yousuishiki/index.html
    九州電力 「揚水発電の仕組み」
    http://www.kyuden.co.jp/effort_water_omarugawa_omaru04.html
  
    執筆者:名波友貴 科学技術館事業部
  
    「科学・技術よもやま話」のバックナンバー
    http://www2.jsf.or.jp/mailmaga/y_index.html
  
  ◆ 科学技術“感”をきたえよう!
  
    〜超・特急で登場! の巻〜
  
    「つばめ」、「はやぶさ」、「とき」
    “はやい”順にならべてください。
  
    ヒントとこたえは、こちらのホームページをご覧ください。
    http://www2.jsf.or.jp/00_info/kagakugijutukan/kagi-kan.html
  
  
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  【3】    ★ 科 学 技 術 館 お す す め ★
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  ◆ 科学の本の紹介
  
    マリー・キュリーのノーベル化学賞受賞から100年目の今年は「世界
   化学年」です。
    今月は「世界化学年」に合わせて、マリー・キュリーに関する本と、化
   学の本をご紹介しましょう。1週目はマリー・キュリーの伝記、2週目は
   彼女の科学教室の紹介、3・4・5週目は化学の本を取りあげます。化学
   をもっと身近に感じるきっかけの一つにしていただければうれしいです。
  
   ■ 『伝記 世界を変えた人々1 キュリー夫人』 ■
     ビバリー・バーチ著/乾侑美子訳/偕成社
     1991年4月/1,600円(税抜)
  
    キュリー夫人は物理学賞と化学賞の2つのノーベル賞を受賞しました。
   自然科学の分野でことなる部門の賞を受賞したのは、キュリー夫人ただひ
   とりです。
    この本には伝記として、すばらしい科学者、マリー・キュリーはどのよ
   うな子ども時代を過ごしたのか、ワルシャワからパリにうつり、どのよう
   に学生時代を過ごしたか、どう研究を進め、新元素のラジウムとポロニウ
   ムを発見したかがていねいに書いてあります。
    さらにそれだけでなく、彼女の研究と発見が、今のわたしたちの生活に
   しっかりとかかわっていることを、わかりやすく紹介しています。読者の
   子どもたちは、それらが、現代の、原子の中の核エネルギーを使ったガン
   の放射線治療や、原子力利用へとつながっていることを知ることができる
   でしょう。
    自転車の前で写真に収まる新婚時代のキュリー夫妻、ささやかな実験室、
   第一次大戦時に兵士のエックス線検査をするマリーと娘など、何枚か写真
   も載っています。今でも強い放射能のため、鉛の保管箱に納められている
   マリーの実験ノートの写真は、まるでマリーの強い意志を伝えているかの
   ようです。
    写真をもっと見たい人は、『マリー・キュリー−科学の流れを変えた女
   性−』ビジュアル版伝記シリーズ フィリップ・スティール著 赤尾秀子
   訳 BL出版もあわせてどうぞ。
  
    執筆者:坂口美佳子 科学読物研究会
  
    この本の表紙はこちらのURLをご参照ください。
    http://kagakuyomimono.cool.ne.jp/hon/12denki/curiefujin/curiefujin.html
  
    科学読物研究会ホームページ http://kagakuyomimono.cool.ne.jp/
  
    「科学の本の紹介」のバックナンバー
    http://www2.jsf.or.jp/mailmaga/b_index.html
  
  
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  【4】    ★ 科 学 技 術 館 ニ ュ ー ス ★
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  ◆ お知らせ
  
   ■「青少年のための科学の祭典2011全国大会」出展者募集のご案内■
  
    平成23年度の全国大会出展者の募集のお知らせを掲載しました。
   出展を希望される方は「青少年のための科学の祭典2011全国大会」
   出展者募集についてのページをご覧ください。
  
    出展1次調査票提出期限:2011年3月14日(月)(必着)
  
    応募方法など詳しくは、こちらをご覧ください。
    http://www.kagakunosaiten.jp/
  
   「青少年のための科学の祭典2011全国大会」
    開催期間:2011年7月29日(金)〜7月31日(日)
         ※ただし、7月29日(金)は特定者向けの開催を予定して
         おり一般の方は入場できません。
         一般来場者向けの開催は7月30日(土)〜7月31日(日)
         の2日間となります。
    開催時間:9時30分〜16時50分
    会  場:科学技術館
  
   ■ 休館日設定のお知らせ ■
  
    既に科学技術館のホームページでご案内しておりますが、今年の4月よ
   り、休館日を設けることになりましたのでご案内いたします。
   何卒、ご理解・ご協力のほどお願い申しあげます。
  
    詳細は、こちらをご覧ください。
    http://www.jsf.or.jp/info/2011/12/post_333.php
  
   ■ ミュージアムショップからのお知らせ ■
  
   ☆今週のイチオシ商品
           『The Frog weather reporter』
  
    小説家や科学者として有名なゲーテが発明したといわれる、水タイプ気
   圧計の原理を使用した商品で、ガラス製のカエルに水を注入するだけで気
   圧の変化が管の水位にあらわれ、数時間後の天気を予測することができる
   商品です。
    お天気キャスターとして活躍されている、森田正光さんもオススメする
   お天気予報インテリアです。
  
    ネットショップでのご購入はこちらから。
    http://www2.smsi.co.jp/museumshop/
  
  ◆ 他館の紹介
  
   ■ 所沢航空発祥記念館 ■
  
   ☆工作教室「オリジナル・キーホルダーをつくろう」開催のお知らせ
  
    透明プラスチック板にマジックで自由に絵を描き、トースターで温める
   と1/6程度に縮みます。金具をつけて、オリジナル・キーホルダーをつ
   くってみよう!!
  
    開 催 日:3月5日(土)、13日(日)
    開催時間:10時〜16時(昼休み12時〜13時)
    開催場所:展示館1階
    参 加 費:無料(入館料が必要です。2回目以降は1回50円)
    定  員:200名(1回につき15名、制作時間約30分)
  
    応募方法などの詳細は、以下のホームページをご覧ください。
    http://tam-web.jsf.or.jp/contx/modules/myalbum2/viewcat.php?cid=1
  
   ■ 船の科学館 ■
  
   ☆「春休み 海の子どもフェスタ」“新東京丸”による東京港見学会
     参加者募集について
  
    「春休み 海の子どもフェスタ」の一環として開催いたします「“新東
   京丸”による東京港見学会」の参加者を募集いたします。“新東京丸”船
   内から、帆船“海王丸”を始めとした東京港内のいろいろな船の見学や、
   航海訓練所職員のお話を聞くことができます。
  
    日  時:3月29日(火)10時30分〜、13時30分〜
    発着場所:青海客船ターミナル(船の科学館 羊蹄丸前)
    募集人数:100名(各回50名)
         ※15歳未満のお客様は保護者の同伴が必要です。
    参 加 費:無料
    受付期間:2月23日(水)〜3月10日(木)
  
    応募方法など、詳細はこちらをご覧ください。
    http://www.funenokagakukan.or.jp/news/?p=687
  
  ◆ イベント情報
  
   ■ 第14回ロボットグランプリ ■
  
    日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス部門は、工学技術の面白さ
   を体験できる「知的スポーツ」を広く一般大衆に提供することで「工学技
   術をスポーツする文化」を創生し、日本が世界に誇る「ものづくり産業」
   の持続的な発展の基盤を確立すべきであると考え、1997年の学会10
   0周年の記念行事に、一般に開かれたロボットの競技大会である「第1回
   ロボットグランプリ」を開催し、その後継続的に開催してまいりました。
    本年も下記の要領で開催いたします。
  
    開催日:3月26日(土)・27日(日)
    会 場:科学技術館1階催物場
    入場料:無料(協議会観戦・併設ロボット展示見学)
        ※科学技術館の展示室(2階〜5階)は入館料が必要です。
  
    詳しくは http://www.RobotGrandPrix.com/ をご覧ください。
  
   ■ 松田邦雄先生「夢追蝶」写真展のご案内 ■
  
    このたび、松田先生が念願の日本の蝶255種の撮影を果たした記念に
   写真展を開催いたします。ぜひ、足を運んでみてください。
  
    開催日時:3月4日(金)〜20日(日)までの金・土・日
         13時〜17時
    開催場所:日本アンリ・ファーブル会 ファーブル昆虫館
         文京区千駄木5−46−6
  
    詳細は、こちらをご覧ください。
    http://www2.jsf.or.jp/mailmaga/320/320.jpg
  
  
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             ★ 担 当 者 よ り ★
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   ■ とうとう手にしてしまった「もし ドラ」 ■
  
    「活字離れ」の傾向が止まりません。出版科学研究所の発表(1月25
   日)によれば、2010年の書籍・雑誌の推定販売金額は、1兆8,74
   8億円。前年比3%減。ピークの1996年からすると3割の減少。国民
   一人あたりにすると、年間14,400円、月当たりでは(わずか)1,
   200円。ネットと携帯情報機器の発達で、新聞やテレビを含めて、メデ
   ィアは大きな変革期を迎えていますが、この数字だけでも、その深刻さの
   一端をうかがうことができます。
    ところで、その出版不況のなかにあって、2010年のダントツ1位に
   なったのが、「もし ドラ」。その価格は1か月分を超える1,680円
   (注1)。
    そして今年の1月末には、なんと200万部を超えて、歴史に残るベス
   トセラーに。なにしろ、1回の増刷数が10万部というのですから、ハン
   パではありません(注2)。
    筆者は、この本については、だいぶ前から、その存在を知ってはいたの
   です。しかし、その表紙カバーに登場するのは「セーラー服の女の子」で
   した。「大経営学者ドラッカー」と「女子高生」という、ありえない(!)
   組み合わせのこの本の想定読者は、いったい、誰だろう、どの階層なのだ
   ろう、と訝(いぶか)って、手に取らずにいました。最近になってネット
   で調べたところ、「ビジネス書、経営書」のジャンルにはいっています。
   出版社によれば、20〜30代のビジネスパースンが読者の中心だそうで
   すが、9歳から90歳までの広い年齢層に及んでいるといいます。男女比
   も55:45と拮抗(きっこう)しているようです。つまり、この表紙カ
   バーは、旧来の常識ではありえない、新鮮なマーケティング手法だったよ
   うなのです(http://moshidora.jp/?page_id=2を参照してください)。
    先日、とうとう、筆者が入手することの決め手になったのは、大学書籍
   のベストセラー・ランキング調査でした。この「もし ドラ」が大学生の
   なかで大人気なのです。一般書ベスト5の部門で、1位が名古屋大学、2
   位東北大学、3位大阪大学、九州大学、4位北海道大学、東京大学、京都
   大学といった具合。さては、本の装丁とは違い、中身はマイケル・サンデ
   ル著『これからの「正義」の話をしよう』くらいには、堅い本なのだろう
   か。
    一晩で読めました。実に軽い本です(苦笑)。経営学・マネジメントの
   「序の口」。
    物語は、都立高校の野球部女性マネージャーが、「(部活)マネージャ
   ー」と「マネジャー」の違いを知らずに買ってしまった、「ピーター・ド
   ラッカー著+上田惇生編訳『マネジメント(エッセンシャル版)』ダイヤ
   モンド社」を頼りにして野球部を立て直していくというものです。この
   「まちがい」を奇貨として、経営学のマネジメントの理論を部活に適用し
   ていくところがミソといえます。彼女が問題にぶち当たって悩む場面で、
   ドラッカーの言葉が引用されます。
    たとえば、「そこで(川島)みなみは、どうやったら高校野球を変える
   ことができるかを考えた。その戦略についても、『マネジメント』にはち
   ゃんと書かれていた。
  
    これに対しイノベーションの戦略は、既存のものはすべて陳腐化すると
   仮定する。したがって既存事業についての戦略の指針が、よりよくより多
   くのものであるとすれば、イノベーションについての戦略の指針は、より
   新しくより違ったものでなければならない。
    イノベーションの戦略の一歩は、古いもの、死につつあるもの、陳腐化
   したものを計画的かつ体系的に捨てることである。イノベーションを行う
   組織は、昨日を守るために時間と資源を使わない。昨日を捨ててこそ、資
   源、特に人材という貴重な資源を新しいもののために解放できる。(『マ
   ネジメント』269頁)
  
   (『もし ドラ』144頁)」
    話題を高校野球部にもってきたのは、正解だと思います。とかく「根性」
   が強調されるスポーツ系「部活」に、反対の極にあるとも見える経営学の
   「マネジメント」を適用したらどうなるのだろうか。かつて「就活」にお
   いては、体育会系クラブの出身者が有利である、といわれてきましたが、
   おそらく、そのココロは、目標を持った組織における資産としての人財の
   マネジメント経験なのでしょう(注3)。ついでながら、ここで、「マネ
   ジメント」に「管理」の和訳を当てはめて使うと、まったく違った雰囲気
   になると思います。
    重要なことは、この物語のスジそのものよりも、ここで提示されている
   状況を、自分の所属する会社、学校、クラブ(部活)、チーム、家庭など
   に置き換えて、ドラッカーの基本コンセプトを応用してみることではない
   でしょうか。
    抽象的な概念や難しいコンセプトを説明する手法として、文字中心では
   なく、「見える化」といわれる図解の手法が注目されていますが、このベ
   ストセラーは、「見える化」に加えて、「小説化」、そしてその先の「ア
   ニメ化」もまた有効な方法であることを示しています。でも、この「序の
   口」で留まっていてはいけない。オリジナルに喰らい付いていかなければ。
  
                        (企画広報室 吉田 浄)
  
   注1.大手流通ルートの日販およびトーハン調査による。2009年12
   月初版発行 ダイヤモンド社。正式なタイトルは「もし高校野球の女子マ
   ネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という、とてつ
   もなく長いもの(括弧を含めて35字!)。かつて「霞ヶ関3丁目の大蔵
   官僚は、メガネをかけたドブネズミといわれる挫折感に悩む凄いエリート
   たちから」という超長い題名の本もありましたね(46字)。この本には、
   略称がなかったと記憶します。略称「もし ドラ」は、後発の「もしドラ
   えもんの『ひみつ道具』が実現したら」との相乗効果で巷に広がったので
   しょう。
  
   注2.「もし ドラ」公式サイトが開設されています。http://moshidora.jp/。
   書籍だけでなく電子書籍版もあります。最近、コミック版が出て、次にN
   HK総合テレビでは、テレビアニメとして、3月中旬から集中放映される
   とのこと。http://www9.nhk.or.jp/anime/moshidora/。その後には、AK
   B48による映画化も予定されており、もはや「もし ドラ現象」という
   べきでしょうか。
  
   注3.ラガーマンの平尾誠二が編集者の松岡正剛と組んで話した『イメー
   ジとマネージ:リーダーシップとゲームメイクの戦略的指針』集英社文庫
   が参考になると思います。「体育会系部活」に関係するひとたちは、「も
   し ドラ」の次に読んでもいいのでしょう。
  
  
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