科学技術館メールマガジン バックナンバー


  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  ━━                               ━━
  ━  ◆ 科 学 技 術 館 メールマガジン ◇ 第479号 ◆  ━
  ━━                               ━━
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                             >>>2014/5/14発行
  
   こんにちは。科学技術館です。
  
   当メールマガジンは毎週水曜日発行です。ご愛読よろしくお願いします。
   大型連休が終わり、「愛鳥週間」が始まっています。北の丸公園にもいろ
   いろな野鳥がいます。カイツブリやハクセキレイなどに遭遇できるかも。
  
   * このメールマガジンは等幅フォントでご覧ください。
  
   本号の配信数 10,831人。
  
  
  ┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘ 今 号 の 目 次 ┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘
  
   【1】科学技術館最新情報
       新着情報・・・日本IBM TryScience実験教室
              理研DAY:研究者と話そう
              「夢・化学-21」わくわく理科・実験教室
              今週のユニバース
  
   【2】科学技術館ラボラトリー
       科学・技術よもやま話・・・
                 「ウェブクリップサービスがおもしろい」
  
   【3】科学技術館おすすめ
       科学の本の紹介・・・「たね」
  
   【4】科学技術館ニュース
       お知らせ・・・科学オリンピック参加者募集のお知らせ
       他館の紹介・・・所沢航空発祥記念館
       イベント情報・・・「第3回科学検定」のお知らせ
                        (5月18日17時まで)
  
    ☆5月の休館日は7日(水)、14日(水)、21日(水)、28日(水)です。
  
  ┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘
  
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  【1】    ★ 科 学 技 術 館 最 新 情 報 ★
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  
  ◆ 新着情報
  
   ■ 日本IBM TryScience実験教室 ■
  
    「TryScience(トライサイエンス)実験教室」は、毎月1回
   日曜日に開催しています。2つ程度のプログラムを用意して実施します。
   何をするかは当日のお楽しみ。
  
    日時:5月18日(日)13時〜16時
    会場:4階D室 イベントホール
  
    詳しくは、こちらをご覧ください。
    http://www.jsf.or.jp/info/2014/05/post_800.php
  
   ■ 理研DAY:研究者と話そう ■
  
    理化学研究所の研究者と話せる「理研DAY:研究者と話そう」で、研
   究の話はもとより、趣味や好きな本、映画など色々な話をしてみませんか。
   みなさまのご来場をお待ちしています。
    なお、本イベント開催のため、「シンラドーム」ドーム投影番組のうち
   12時45分以降の番組上映を休止いたします。
  
    日 時:5月18日(日)14時〜、15時30分〜(各回30分)
    会 場:4階B室「シンラドーム」
    参加費:無料(ただし、入館料は必要です)
    定 員:各回62名(当日先着順)
    研究者:松井毅さん(理化学研究所)
    テーマ:皮膚は進化してきた 〜陸にあがった動物から人間まで〜
        (2回とも同じ内容です)
  
    詳しくは、こちらをご覧ください。
    http://www.jsf.or.jp/info/2014/05/post_801.php
  
   ■ 「夢・化学-21」わくわく理科・実験教室 ■
  
   「夢・化学-21」わくわく理科・実験教室は、実験や工作・観察を通じて、
   子どもたちに化学の面白さや不思議さを伝えるとともに科学的なものの見
   方や実験器具の扱い方を習得してもらうことを目的としている体験型の講
   座です。
  
    日  時:6月14日(土)13時30分〜、15時〜(各回45分)
    場  所:4階I室「実験スタジアム」実験スタジアムL
    テ ー マ:草木染めに挑戦しよう
    講  師:上村礼子先生(都立小石川中等教育学校)
    対  象:小学校1年生〜4年生(保護者同伴)
    定  員:各回40名
    参 加 費:無料(参加者および付添保護者1名は入館料無料)
    応募方法:Web申込みフォーム(応募者多数の場合は抽選)
    応募締切:5月25日(日)
    主  催:「夢・化学-21」委員会
    問 合 先:一般社団法人日本化学工業協会 広報部内
         「夢・化学-21」委員会事務局(03−3297−2555)
  
    応募方法や今年度の日程など詳しくは、こちらをご覧ください。
    http://www.kagaku21.net/index.php?mode=event_detail&seq=7
    http://www.kagaku21.net/wakuwaku/2014wakuwaku-web.pdf
  
   ■ 今週のユニバース ■
  
    土曜午後の科学ライブショー「ユニバース」では、4階シンラドームの
   スクリーンに全天周のシミュレーション映像を投影し、地球から太陽系、
   恒星の世界、銀河の世界、そして宇宙全体のお話をお伝えします。
  
    日 時:5月17日(土)14時〜、15時30分〜(各回40分)
    会 場:4階B室「シンラドーム」
    定 員:各回60名
    案内役:野本知理さん(千葉大学)
  
    詳しくは、こちらをご覧ください。
    http://www.jsf.or.jp/exhibit/floor/4/4b/#entry-1707
  
  
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  【2】   ★ 科 学 技 術 館 ラ ボ ラ ト リ ー ★
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  
  ◆ 科学・技術よもやま話
  
   ■ ウェブクリップサービスがおもしろい ■
  
    私は情報システム部という部署に所属しており、仕事で一日中コンピュ
   ータを触っているにもかかわらず、プライベートでも何かとパソコンを手
   放せず、インターネット上で新しいサービスが出れば使ってみずにはおれ
   ないという因果な性格をしております。ちなみに科学館なのに何で情報シ
   ステム部なんていう部署があるの? と思われた方にちょっと事情を説明
   すると、当館が開館した当時、展示物として導入したホストコンピュータ
   でおこなっていた演示(性格職業診断なんかのプログラムを動かしていま
   した)が好評だったので、もっといろいろ世の中の役に立てようと情報処
   理関連業務をはじめたというのがそもそもの経緯だったようです。その後、
   様々な変遷を経て現在に至るわけですが、では今、この部署でどういった
   仕事をしているのかということに関しては、当財団公式サイトの中に情報
   システム部を紹介しているページ(*1)がありますので、こちらでご確
   認いただければと思います。
    さて、話が大きくそれましたが、そんな公私ともにコンピュータざんま
   いの生活を送っている私が、いまFacebookやTwitterより
   面白いと思ってプライベートの多くの時間を割いて使っているのは
   Tumblr(*2)というサービスです。このサービスでは自分が著作
   権を持っているオリジナルの、またはインターネット上にある自分以外が
   制作した他の方が著作権を持つ、テキスト、画像、動画といったあらゆる
   形式の気に入ったコンテンツを、著作権を明示しつつ、コレクションとし
   て1つの時系列に並べて表示できるように蓄積していけるしくみを提供し
   ています。
    一般的なブログサービスや、Facebook、Twitterといっ
   たマイクロブログサービスでは、オリジナルのコンテンツをいかに簡単に
   気軽に提供できるようにするか、ということが追求されてきました。こう
   いったサービスのおかげで、あまりコンピュータやインターネットに詳し
   くない方でも気軽に情報発信できるようになりましたが、反面あまりにも
   簡単に情報発信できるようになったが故に、自分にしか発信できない情報
   を持っているわけではないが、とりあえず自己顕示欲を示したいという理
   由からか、多くの人に反感を買ってしまうような行為の状況をあまり考え
   ずに公開してしまったり、他人の著作物を自身のコンテンツと偽って公開
   してしまったりといった、情報公開のしくみに振り回されてしまう方々も
   出てきてしまっています。
    一方で、インターネット上のコンテンツは増え続け、ただ検索するだけ
   では自分の感性に合ったコンテンツに出会うのも難しい状況です。
    こういった現状に対して、Tumlbrをはじめとしたウェブクリップ
   サービスは、ある人が面白いと思って蓄積したコンテンツに対し、別の人
   が興味を持ってフォロワーになることで、いわばインターネット上の面白
   いと思ったものをお互いに持ち寄って共有するというイメージであり、イ
   ンターネット上のコンテンツを自身の興味を核として濃縮していけるしく
   みとして有効ではないかと感じているところです。
  
    (*1)http://www2.jsf.or.jp/02_josys/josys.html
    (*2)https://www.tumblr.com/
  
     執筆者:小林成稔 情報システム部
  
    「科学・技術よもやま話」のバックナンバー
    http://www2.jsf.or.jp/mailmaga/y_index.html
  
  
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  【3】    ★ 科 学 技 術 館 お す す め ★
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  
  ◆ 科学の本の紹介
  
    外遊びのいい季節になりました。土手や草原で遊んできた子どもたちの
   服には、植物のたね(実)がいっぱいくっついてきますね。それは、動け
   ない植物たちが、仲間を増やすために、たねを遠くへ運ぶ工夫のひとつで
   す。今週から4冊、「たね」をテーマに本を紹介します。
    1冊目は、旅をするたねのおはなしの絵本です。
  
   ■ 『ぼくはたね―たびをするたねのはなし―』 ■
     甲斐信枝 作/森田竜義 監修/福音館書店/
     2009年9月/900円+税
  
    たねたちはなぜ、そのかたちをしているのでしょうか?
    この本は植物たちが命をつないでいくための「たねのたび」が、幼い子
   どもたちにもわかりやすいように描かれています。
    とげとげイガイガのいたずらっ子たち、きみたちは旅するためにそんな
   かたちをしているんだね。誰かにしがみついてどこか遠くへ旅するために。
    水の辺でさやや花びらに包まれたおひめさまたちは、水に浮かんで船の
   旅、色とりどりの木の実たちは、鳥たちのおなかの中に入って空の旅。旅
   をするたねは、それぞれの旅のスタイルに応じ、支度を調え、旅立つその
   時を夢見ながらその瞬間をじっと待っています。
    優しい色調の甲斐さんの絵からは、旅する日をひたすら夢見て支度を整
   えているたねたちへのいとおしさが伝わってきます。野原のいたずらっ子、
   イガイガのオナモミまでもが、かわいらしく見えてしまいます。
    クサネムのさやを開いてみると、さやは浮かんでたねは沈んで…。さや
   が浮き袋になっている様子がよくわかり、自分でも実験してみたいな…と
   科学する心がくすぐられます。
    鳥に運んでもらう木の実は果物のようにおいしそう。中にはしっかりた
   ねが入っています。最後のページ、メジロから「ぽっとん」と落としてい
   るたねの下には、新しい芽が出てきています。
    「たねたちはこうやって旅をし、仲間を増やしていくのね。」と親子で
   楽しめる一冊です。
  
    執筆者:青田 紅  科学読物研究会
  
    この本の表紙はこちらのURLをご参照ください。
    http://www.kagakuyomimono.com/hon/6shokubutsu/bokuhatane/bokuhatane.html
  
    科学読物研究会ホームページ http://www.kagakuyomimono.com/
  
    「科学の本の紹介」のバックナンバー
    http://www2.jsf.or.jp/mailmaga/b_index.html
  
  
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  【4】    ★ 科 学 技 術 館 ニ ュ ー ス ★
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  
  ◆ お知らせ
  
   ■ 科学オリンピック参加者募集のお知らせ ■
  
    科学技術館を運営する日本科学技術振興財団が事業の運営に携わる「日
   本生物学オリンピック2014」をはじめ、「物理チャレンジ2014」、
   「化学グランプリ2014」の参加者を募集しています。
  
    対象:20歳未満のおもに高校生・中学生
  
    詳しくは、こちらをご覧ください。
     日本生物学オリンピック     http://www.jbo-info.jp/
     物理チャレンジ         http://www.jpho.jp/
     化学グランプリ         http://gp.csj.jp/index.html
     科学オリンピック申込専用ページ https://contest-kyotsu.com/entry/
  
  ◆ 他館の紹介
  
   ■ 所沢航空発祥記念館 ■
  
   ☆「YS−11機」一般公開のお知らせ
  
    「YS−11機」は、戦後日本の航空界が総力をあげて開発した国産初
   のターボプロップ旅客機で、ここに展示されている機体は、全日空所有で、
   エアーニッポンが路線運航していたものです。
  
    開催日時:5月17日(土)10時〜15時
    展示場所:西武新宿線「航空公園」駅前
    参 加 費:無料
         ※雨天の場合、公開は中止となります。
  
    詳しくは、こちらをご覧ください。
    http://tam-web.jsf.or.jp/contx/modules/myalbum5/viewcat.php?cid=1#169
  
   ☆公開講座「戦後日本の航空技術者たち ―国産航空機を作るために―」
  
    戦後、「YS−11機」に代表される民間機や国産防衛機の開発に関わっ
   た航空技術者たちを通して、彼らが果たした役割や次世代の航空技術者た
   ちに伝承した技術、そして現在開発が進む国産機について紹介します。
    
    開催日時:6月21日(土)13時〜15時30分
    会  場:記念館1階研修室
    参 加 費:無料
    定  員:60名
    参加対象:高校生以上
    講  師:前間孝則氏(ノンフィクション作家)
    申込方法:インターネットまたは往復はがき
    応募締切:6月12日(木)17時(※往復ハガキの場合、当日必着)
  
    詳しくは、こちらをご覧ください。
    http://tam-web.jsf.or.jp/contx/modules/myalbum5/viewcat.php?cid=1#172
  
  ◆ イベント情報
  
   ■ 「第3回科学検定」のお知らせ(5月18日17時まで) ■
  
    科学のおもしろさに感動し、科学がますます好きになる検定です。「普
   段の生活で起きること」に関する問題を選んでいます。問題を通して、科
   学的な視点、自然観を身に着けて欲しいと考えています。
  
    開催期間:5月15日(木)10時〜5月18日(日)18時
    会  場:ウェブ上(オンライン受験)
    受 験 料:4,000円(3級)、3,000円(4〜7級)
    出題内容:3・4級 中学校の理科の知識を前提とした問題
         5・6級 小学校までの理科の知識を前提とした問題
         7級   小学校低学年でもチャレンジできる問題
    申込方法:ウェブにて
    申込締切:5月18日(日)17時
    主  催:科学検定委員会
    問合せ先:科学検定委員会 事務局(ルネサンス・アカデミー株式会社内)
         03−6439−3774(平日 11時〜17時)
  
    申込方法など詳しくは、こちらをご覧ください。
    http://www.kagaku-kentei.jp/?bnr_id=jsf
  
  
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
             ★ 担 当 者 よ り ★
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  
   ■ 子どもの勉強への親(保護者)の関わり方 ■
  
    メルマガ読者の皆さんは、今回のゴールデンウィークをどのように過ご
   されましたか。多くのご家庭では、4連休だったと思います。遠出をして
   想い出と疲れが残った、近場の科学館・博物館に出かけて楽しんだ・頭が
   疲れた、子どもといっしょに学校の教科書(4月分)を復習したなどなど。
   そんな時間を過ごしながら、父母ほか保護者の方々は、どのくらい、子ど
   もに寄り添っておられたでしょうか。
    筆者は、仕事柄、学校教育や家庭教育に関する資料・データを目にする
   機会が多いのですが、最近、おもしろいタイトルの論文サマリーに出会い
   ました。そのタイトルとは、
  
    「子どもはテレビやゲームの時間を勉強時間とトレードするのか
     〜小学校低学年の子どもの学習時間の決定要因〜 」(注1)
  
    これを書いたのは経済学の研究者です。経済学では、人間は、自分の行
   動を決めていく際に、いくつかの選択肢のなかから、自分の「効用(util-
   ity)」を最大にするようなコトを選ぶ、やさしく言うと、自分の満足度が
   もっとも高くなるようなコトを選んでいるというのです(注2)。
    その真偽はともかくとして、まずは、子どもがどのくらいゲームを楽し
   んでいるかを見てみましょう。
    2009年の調査(注3)ですが、パソコンゲーム、携帯型ゲーム機お
   よび携帯電話のゲームを含んでの「テレビゲーム」をする時間(1日あた
   り)について、1時間以上の小学生は52.7%。1時間以上の中学生は
   57.4%と、その半数以上が1時間を超えて楽しんでいます。一方、テ
   レビの視聴時間は、10代(平均)では1日あたり103分、つまり1時
   間40分。
    この2つを単純に合算することはできませんが、子どもの帰宅後、就寝
   するまでの時間のうち、かなりのシェアを占めていることは事実です。父
   母ほか保護者は、このテレビやゲームの時間を無駄(=これから得られる
   「効用」は低い)とみて、「テレビを視るのは止めて、早く勉強しなさい」
   を連発します。
    それでは、テレビやゲームの時間を減らすと、その分勉強時間は増える
   のでしょうか。この報告によれば「小学校低学年の児童では、テレビや 
   ゲームの時間と勉強時間には負の因果関係を示すロバストな結果を得た。
   しかしながら、その効果は無視できるほどに小さい。テレビやゲームの時
   間が1時間増えても、男子でわずか1.86分、女子で2.70分の勉強
   時間を減らすに過ぎない。」とあります。
    保護者は、いま、この1時間を勉強に充てることが、子どもにとって、
   将来の満足度を引き上げることになるという「合理的判断」をしているの
   でしょう。しかし、子どもには、「そんなことは、知ったこっちゃない!」
   わけです。そもそも、好きなことを止めさせたからといって、その空いた
   時間を、自発的に子どもが興味を持てない勉強に充てるとは考えにくいで
   すよね。子どもは子どもなりに、将来を見通してではなく現在での満足度
   を高める選択をしているのですから。ベストのテレビ等を封じられれば、
   次には、セカンド・ベストの楽しい遊びを見つけて時間消費をするだけで
   す。
    次に、この論文は、私たちの常識と一致する、興味深い調査結果を示し
   ています。子どもの勉強時間に影響する要因は、「親の関与」だというの
   です(注4)。関与の仕方は、(1)勉強したか確認している(confirms
   that the child studied)、(2)勉強を見ている(watches the child
   study)、(3)勉強する時間を決めて守らせている(makes the child
   adhere to set study times)、(4)勉強するように言っている(tells
   the child to study)の4種類。
    注目すべきは、関与する親が母か父か、子どもが男の子か女の子か、そ
   して関与の仕方、によって、効果がずいぶんと違うことです。あまり効果
   がないのが、母親が子どもに「(4)勉強するように言う」もの。とくに
   女の子には逆効果です。父親が子どもに「(1)勉強したか確認している」
   もの。とくに男の子には効果がありません。逆に、大きな効果を期待でき
   るのは、「(2)勉強を見ている」では、父親の場合に効果的であり、「(
   3)勉強する時間を決めて守らせている」では、母親が効果的です。親子
   の性別と関与の仕方によって、効果が大きく変わるのです(注5)。
    まとめると、子どもが自発的に勉強する習慣をつけるまでは、親の能動
   的な関与、言い換えれば子どもに寄り添っていることが必要だということ
   になります。
  
    ところで、最近、日本でも「共働き」の家庭が増えてきました。国とし
   ても、子育て中の母親の就業率が落ち込んで、全体として女性の労働力率
   が「M字カーブ」を描いているのを政策的に是正しようとしています(注
   6)。そうなると、何も対策を施さないと、子どものなかに「鍵っ子」が
   増えていき、親の子どもに対する関与時間が減ってしまいます。
    この調査は、「(小学校低学年までの)子育て」と「両親の就労」、そ
   の両立は難しいことを含意しているのでしょうか。いやいや、そうではあ
   りません。「関与者は必ずしも親である必要はなく、親戚、祖父母、ある
   いは他人(「放課後教室」のボランティア、塾の先生など)でも、同程度
   の影響が見られる」と結んでいます。もちろん、学校教育における教員は
   もっとも重要な役割を担っています。子どもが自発的に勉強する習慣をつ
   けるまでは、おとなの能動的な関与が望ましい、というのです。
    最後に、全国学力・学習状況調査(平成25年)の追加調査として実施
   した「保護者に対する調査」の結果を活用して、お茶の水女子大学が実施
   した家庭状況と学力の関係などについての最新の分析を示します(注7)。
   これによれば、「生活習慣に関する働きかけ」、「読書に関する働きかけ」、
   「学習に関する働きかけ」、「文化・藝術・自然体験活動に関する働きか
   け」、「子どもとのコミュニケーション」について、保護者の子どもに対
   する接し方の違いにより、子どもの学力に違いが出ているとしています。
   子どもの学力を上げるには、「とてもできそうにない特別の努力」を必要
   とするのではなく、日ごろからの保護者の子どもへの接し方の「ちょっと
   した意識・実践」により、かなりの効果を期待できるのではないでしょう
   か。
  
                         (経営企画室 吉田浄)
  
    注1〜7はこちらをご覧ください。
    http://www2.jsf.or.jp/mailmaga/479/479.pdf
  
  
  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  
     当館では、実験・工作ができる会場の貸し出しを行っています。
     ご興味のある方は、こちらをご覧ください。
     http://www.jsf.or.jp/exhibit/floor/4/4i/#entry-3359
  
  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  
     最後までお読みいただきありがとうございました。
     皆様のご来館をお待ちしております。
  
   ※科学技術館メールマガジンに関するお問い合わせやご意見、ご感想は
    こちらのURLからお願いします。
    http://www3.jsf.or.jp/mlmaster/
  
   科学技術館ホームページ>>> http://www.jsf.or.jp
  
  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  
    配信解除・配信先変更、バックナンバーについては、こちらのホーム
    ページからお願いします。
    https://www3.jsf.or.jp/mailmaga/menu.asp
  
  ┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘
  ┘                                 ┘
  ┘ 発行者:科学技術館メールマガジン係               ┘
  ┘    〒102-0091 東京都千代田区北の丸公園2番1号       ┘
  ┘                                 ┘
  ┘ ※ このメールマガジンの回覧・転送は自由です。内容の引用・転  ┘
  ┘  載の際には、「科学技術館 メールマガジン 第何号の***の  ┘
  ┘  記事」と注釈をいれてください。                ┘
  ┘  なお、メールマガジンで参照しているWebサイトのすべての画  ┘
  ┘  像・記事については、著作権法に定める例外を除き、著作権者の  ┘
  ┘  許可なく使用・転載することはできません。           ┘
  ┘                                 ┘
  ┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘



操作メニューへ

メールマガジンに関するお問い合わせは、下記までご連絡ください。
科学技術館メールマガジン問い合わせ窓口:http://www3.jsf.or.jp/mlmaster/

Copyright (C)2004 Science Museum, Tokyo, ALL RIGHTS RESERVED